目次
エアロゾル感染とは?
「エアロゾル(aerosol)」とは、気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体のことを言います。エアロゾル粒子は、直径が0.001μmから100μm程度のものを指すと言われています。
くしゃみや咳をしたときに口から放出される飛沫は水分量が多く、重たいため、放物線を描きながら重力によって地面に落下します。粒子径も大きいので不織布のマスクを通過しませんし、マスクの横から曲がって入ってくるということもありません。飛沫感染というのは、このような飛沫に含まれる病原体が眼、鼻、口の粘膜に付着することで起こります。
一方で粒子径が10~5μm未満のエアロゾルは、水分が蒸発して軽いので、より長い時間、長い距離を漂うことができます。特に、5μm未満のエアロゾルになると、肺のなかを通る気管支の末端にある肺胞まで到達することができます。空気感染がおこるのは、このくらいの小ささのエアロゾルに含まれた病原体を吸い込んだ場合です。
「エアロゾル感染」について統一された定義はない!
実は、今回問題になっている「エアロゾル感染」について、世界的に統一された定義は存在しません。日本では、感染症は「接触感染」「飛沫感染」「空気感染(飛沫核感染)」「媒介物感染(水や食品、血液、虫などを媒介した感染)」という4通りの方法で広がると見なしており、エアロゾル感染は感染経路として定義されていないのです。
日本において、飛沫感染と空気感染は、粒子径が5μm以上か、5μm未満かで区別されています。飛沫から水分が蒸発したものを飛沫核と呼び、すぐに地面に落ちる飛沫とは異なり、空気中に長く浮遊して吸入した人を感染させる(空気感染)と考えられています。
つまり、粒子径が5μm未満の微細なエアロゾルによって感染するものが「空気感染」と定義されているわけです。
コロナウイルスはエアロゾル感染する!?
米国の研究グループは、新型コロナウイルスが空気中をミストのように浮遊する「エアロゾル」の状態で3時間以上生存できると医学専門誌で発表し、「エアロゾルの伝播がもっともらしいことを示している。なぜなら、ウイルスはエアロゾル中で数時間、生存し、感染性を維持できるからだ」としました。
これに対して、厚労省結核感染症課は「エアロゾル中でウイルスがある程度の時間、生存し続けることと、エアロゾルによって感染することとはイコールではない。引き続き、国内でエアロゾルによって感染したことを示す証拠は見つかっていない」とコメントし、接触感染、飛沫感染の2種が感染経路であるとの従来の見解を堅持しました。
「三密」と言われる空間はエアロゾル感染リスクが高い!?
新型コロナウイルスの感染が起こりやすいと指摘されている
- 換気の悪い密閉空間[密閉]
- 人が密集していた[密集]
- 近距離での会話や発声が行われた[密接]
という3条件が同時に重なった空間。なぜ、この3条件が重なると感染が起こりやすくなるのか?よく考えてみてください。厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染経路は接触感染や飛沫感染しかないという見解を出していますが、このいわゆる「三密」空間で感染が起こりやすいことは、接触感染や飛沫感染では説明がつかないのです。これは、まさに「三密」空間が「エアロゾル感染」が起きる可能性が高い場所だということにほかならないのです。
新型コロナウイルスは空気感染するのか?
厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」において、次のように解説されています。
『国内の感染状況を見ても、空気感染は起きていないと考えられるものの、閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等がなくても感染を拡大させるリスクがあります。』
これって矛盾していると思いませんか!?前半では空気感染の存在を否定しておきながら、後半ではいわゆる「三密」空間での空気感染の可能性を認めてそのリスクに警戒するよう呼びかけているのです。
空気感染が起きるかもしれない!リスクの高い場所・行為
- ライブハウス、コンサート会場、映画館、劇場
- カラオケボックス、カラオケバー
- パチンコ店・ゲームセンター
- 居酒屋・ライトクラブ
- 飲み会・会食・宴会など
- さまざまな屋内イベント
- 更衣室・トイレ・授乳室・喫煙ルーム・エレベーターなどの密閉空間
- 職場の会議室・応接室などでの会議・対話
- 通勤ラッシュ時の電車・バスなどの交通機関
- その他、密閉空間で長時間、複数の人と時間をともにする行為