基礎知識

内水氾濫とは?外水氾濫との違いは?備え・対策は?

防災の基礎知識

「内水氾濫」とは?

内水氾濫とは、市街地などに降った雨が排水路や下水管の雨水処理能力を超えた場合や、雨で川の水位が上昇して市街地などの水を川に排出することができなくなった場合に、市街地などに水が溢れてしまう浸水害のことです。特に、都市部では雨水が地面に浸水しにくい構造になっており、短時間で大雨が降ることにより排水路や下水管の処理能力を超えることで内水氾濫が発生する可能性があるのです。

これは豪雨災害の際の盲点になる可能性があるのです。豪雨のときに河川の水位が上昇することで堤防の決壊などによる水害ばかりを心配してしまいがちですが、都市部では堤防が決壊しなくても堤防の内部から「内水氾濫」によって水害が起こりうるということを肝に銘じておく必要があるのです。

内水氾濫は標高が低く体積が小さいエリアで発生する可能性が高く、具体的には地下街、地下室、道路のアンバーパスやトンネルなどで発生することがあります。内水氾濫は雨水処理能力を向上させたり、貯水池や遊水池を設置させたりすることによってハード防災対策を取ることができます。

2019年10月の台風19号による浸水被害では、神奈川県川崎市や東京都世田谷区でマンションや病院の内部にまで大量の浸水が起きて、予想外の事態を招く結果となりました。大量の雨水を下水道から川に排出できなくなり、雨水が地上にあふれ出るという内水氾濫が引き起こした水害です。

また、2020年7月の梅雨後期豪雨の際には、福岡県大牟田市で河川の氾濫はなかったにもかかわらず広範囲で浸水被害がありました。これは、排水ポンプが大量の雨水によって水没し故障してしまったために起きた内水氾濫だったのです。

外水氾濫との違いは?

外水氾濫とは、台風や大雨等によって川の水が堤防からあふれたり、堤防が決壊したりすることによって市街地が浸水する水害のことです。一方、内水氾濫は堤防から水が溢れなくても河川へ排出する水処理の能力不足で発生する浸水害です。

内水氾濫への備え

防災気象情報などをこまめに確認するとともに、平時から内水氾濫への備えをしておき、被害を最小限に抑えられるようにしましょう。

  • 側溝などの掃除
  • ハザードマップの確認
  • 避難経路と避難場所の確保
  • 防災気象情報のこまめな確認
  • 早めの避難行動

参考書籍

※Amazonより

私たちはいつまで危険な場所に住み続けるのか
自然災害が突き付けるニッポンの超難問


私たちはいつまで危険な場所に住み続けるのか

気候変動で激甚化が予想される水害や土砂災害。私たちはどこに住み、働くか。もはや災害リスクに無自覚ではいられません。長年にわたって被災地の取材を担当してきた建築・住宅・土木分野の専門記者が「気候変動の世紀」を生き抜くための手掛かりを提供します。

こんな人におすすめです。
建築・住宅・土木の専門家、自治体・企業の防災担当者、家づくりを考えている人、自宅や自分の土地が抱える災害リスクに関心がある人、防災分野で事業を考えているビジネスパーソンなど

主な内容

はじめに 5メートル浸水した場所で進む住宅再建

第1章 水害事件簿
地球温暖化による気候変動の影響で、激甚化が懸念される水害。短時間強雨の発生件数が30年前の1.4倍になるなど、すでにその兆候は表れている。まずは西日本豪雨や東日本台風など、近年の水害で起こった数々の「想定外」を報告する。

第1章の主なコンテンツ
タワマン浸水の衝撃、都市部を蹂躙する内水氾濫/ミュージアムに濁流、市民の共有財産が水浸し/バックウオーターで都市水没、外水氾濫の破壊力/繰り返される高齢者施設の悲劇/我が家が浮いて流された! /工業団地から企業が逃げ出す/「リスクの説明を怠った」自治体に衝撃の判決

第2章 狙われた臨海部
国内でしばらく大きな被害がなかったことから、軽視されてきた高潮リスク。2018年の台風21号では関西国際空港が水没するなど、改めてその脅威が認識された。重要インフラを機能停止に追い込んだ高波・高潮の被害実態を探る。

第2章の主なコンテンツ
関空水没を引き起こした高波・高潮/憧れのウオーターフロントが水浸し/高潮対策、空白の「堤外地」

第3章 土砂災害頻発列島
毎年、多発する土砂災害。その数は年間1000件を超える。平地が少ない日本に住むうえで、斜面崩壊からは逃れられない。熱海土石流や、逗子のがけ崩れ、広島土砂災害など列島を揺るがした様々な土砂災害を追った。

第3章の主なコンテンツ
木造家屋をいともたやすく押しつぶす土石流/急傾斜の宅地が女子高生の命を奪う/都市の時限爆弾、足元で崩れる谷埋め盛り土/復旧を妨げる洪水のような土砂災害/違法造成で増え続ける危険地/雨が降らなくても斜面は崩壊する

第4章 危険な土地からの撤退
災害から生命と財産を守るには、危険な土地に居住しないことに尽きる。自治体は都市計画や条例で、強制的ではなく緩やかな誘導を図り始めている。危険な土地からの戦略的撤退に勇気を持って踏み出すときがきた。

第4章の主なコンテンツ
川だけでは水害を防げない、流域治水への転換/都市計画や条例で危険地の無居住化を目指す/災害リスクに見合った不動産価格に/計画誘導でコンパクトシティーへ緩やかに移行/災害危険地からの脱出/氾濫域管理の切り札となるグリーンインフラ

第5章 耐水都市への挑戦
災害のリスクが全くない土地を見つけるのは難しい。そこで重要になるのが、既存の街を浸水に強い「耐水都市」へと変えていく発想だ。これまで水害対策に未着手だった住宅・建築分野も、ようやく本腰を入れ始めた。

第5章の主なコンテンツ
おざなりだった建築の耐水性能、産官学が動く/浸水しても大丈夫「耐水住宅」が続々/重要設備を死守、浸水対策の先進メニュー/「首都水没」を乗り越える街づくり

第6章 防災テックに商機
様々な自然災害リスクにさらされる日本は、防災技術を磨くのに格好の舞台だ。いかに被害を軽減し、被災者を救うことができるか。防災テック(防災×テクノロジー)を活用した挑戦が始まっている。

第6章の主なコンテンツ
防災テックの萌芽、命と街はデータで守る/宇宙の目「人工衛星」で被害を把握/台頭するスタートアップ企業、日本は格好の舞台(ワン・コンサーン、スペクティ、アリスマー)

Sponsored Links