基礎知識

[竜巻の基礎知識]発生する仕組み・被害の特徴・行動指針は?

防災の基礎知識

竜巻とは?発生の仕組みは?

竜巻とは、ひとことで言えば「高速回転する空気の渦」のこと。気象庁では「積雲や積乱雲に伴って発生する鉛直軸を持つ激しい渦巻で、漏斗状または柱状の雲を伴うことがある。地上では収束性で回転性の突風や気圧の急下降が観測され、被害域は帯状・線状となることが多い。」と定義されています。自然現象のなかでもしばしば、この竜巻が発生することがありますが、そのメカニズムについては完全に解明されているわけではありません。しかし、竜巻の発生について分かっていることもあります。

竜巻は、積乱雲が発達した状況で、その積乱雲の周りで空気が回転しながら上昇していったときに発生しやすいと考えられています。空気が回転しながら上昇していくにつれ回転の半径が小さくなり風が強くなった結果、竜巻となるのです。とは言え、積乱雲は自然界で無数に発生しており、空気の流れはほとんどがなんらかの回転性を持っているにもかかわらず、竜巻はそれほど頻繁には発生していないことから、さらに何らかの条件が必要だと思われます。

竜巻が発生しやすい時期

日本では、竜巻は台風や寒冷前線、低気圧などに伴って、季節を問わず全国で発生していますが、特に積乱雲が発達しやすい台風シーズンを含む夏から秋にかけて多く発生し、全体の約7割を占めています。また、夜間よりも昼間に多く確認されており、11時〜18時にかけてがピークと見られています。

発達した積乱雲が近づいている時の兆し

周りの天気が以下のように変化してきた場合には積乱雲が近づいている兆しなので、竜巻が発生しやすい状況にありますので、注意しましょう。

  • 真っ黒い雲が近づき、周囲が急に暗くなる
  • 雷鳴が聞こえたり、雷光が見えたりする
  • ひやっとした冷たい風が吹き出す
  • 大粒の雨やひょうが降り出す

特に、急速に発達する積乱雲は「スーパーセル」と呼ばれ、豪雨やひょう、竜巻などの激しい気象現象をもたらすことがあります。また、発達した積乱雲の付近では、竜巻だけでなく「ダウンバースト」や「ガストフロント」と呼ばれる突風による被害も想定されます。竜巻だけでなく、これらの突風にも注意してください。

竜巻による被害の特徴

短時間で狭い範囲に集中して甚大な被害をもたらします。被害の多くは、数分〜数十分で長さ数km〜数十km・幅数十〜数百mの狭い範囲に集中しています。

移動スピードが非常に速い場合があります。

建物が倒れたり、自動車がひっくり返ることもあります。

様々なものが竜巻に巻き上げられたり、猛スピードで飛んできます。人や様々なものが飛ばされるだけでなく、巻き上げられたものが猛スピードで飛んでくることも竜巻の恐ろしさです。

建物の中でも、飛んできたものが窓ガラスを割ったり壁に刺さったりする場合があります。軽い木材やハンガーであっても竜巻によって猛スピードで飛来すると、簡単に住宅の壁に刺さったり突き破ったりします。

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竜巻が発生したときの行動指針

竜巻が発生したときには、建物などの被害は防げませんが、身の安全を守ることはできます。屋外にいる場合は頑丈な建物などに避難し、屋内にいても窓ガラスには近づかず、一階の丈夫な机の下などで身を小さくして頭を守ってください。竜巻は短時間に猛スピードで様々なものを巻き上げながら、建物などに甚大な被害を与えます。すぐに身を守るための行動をとってください。

気象庁では、竜巻やダウンバーストなどによる激しい突風が予測されるときに、国民の皆さんに注意を呼びかけるため、「竜巻注意情報」を発表しています。また、目撃情報が得られて竜巻等が発生するおそれが高まったと判断した場合にも発表しており、有効期間は発表から約1時間です。

竜巻等に対しては身の安全を確保することが何よりも重要です。人が大勢集まる屋外行事や高所作業のように避難に時間がかかる状況では、気象情報や雷注意報にも留意し、万一に備え早め早めの避難を心がけてください。

竜巻注意情報が発表された場合には、まず周囲の空の様子に注意し、急に真っ暗になる、大粒の雨が降り出す、雷鳴が聞こえるなど、積乱雲が近づく兆候が確認された場合には、頑丈な建物に避難するなど身の安全を確保する行動をとってください。

竜巻注意情報が発表された場合には、気象庁ホームページの竜巻発生確度ナウキャストで、危険度の高まっている領域をこまめに確認してください。竜巻注意情報と竜巻発生確度ナウキャストは組み合わせて利用することが効果的です。

竜巻発生確度ナウキャストとは?

竜巻発生確度ナウキャストでは、気象ドップラーレーダーなどから「竜巻が今にも発生する(または発生している)可能性の程度」を推定し、これを発生確度という用語で表します。竜巻発生確度ナウキャストは、竜巻の発生確度を10km 格子単位で解析し、その1時間後(10~60分先)までの予測を行うもので、10分ごとに更新して提供します。

竜巻が間近に迫ったら・・・

竜巻が発生したときには、建物などの被害は防げませんが、身の安全を守ることはできます。竜巻の移動スピードは非常に速いため、竜巻を見ても写真や動画を撮影したりせず、ただちに身を守る行動を取ってください。竜巻注意情報が発表された場合や積乱雲とその兆しを感じたら、以下のように身の安全を確保しましょう。

[1]屋外では・・・

  • 近くの頑丈な建物に避難するか頑丈な構造物の物陰に入って、身を小さくしてください
  • 物置や車庫、プレハブ(仮設建築物)の中は危険ですので避難場所にはしないでください
  • 周辺に身を守る建物がない場合には、水路などくぼんだところに身を伏せて両腕で頭や首を守ってください

[2]屋内では・・・

  • 一般の住宅では雨戸、窓やカーテンを閉め、家の1 階の窓のない部屋に移動してください
  • 丈夫な机やテーブルの下に入るなど、身を小さくして頭を守ってください
  • 大きなガラス窓の下や周囲は大変危険ですので窓ガラスから離れてください

オススメの参考書籍

※Amazonより

新訂 竜巻〜メカニズム・被害・身の守り方〜 (極端気象シリーズ5)


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いつどこで発生するかわからない「竜巻」の仕組みを、第一線の研究者が、発生する仕組み突風・トルネードとの違いを学び、さらに竜巻から身を守る方法、過去の竜巻事例、最新の情報をもとにわかり易く解説。

【本書のポイント】
・竜巻の科学的メカニズムをやさしく丁寧に解説
・過去の事例から日本における竜巻の実態をしる
・最近の竜巻観測について紹介
・竜巻から身を守る方法を知り、防災に役立てる

竜巻のふしぎ 〜地上最強の気象現象を探る〜


竜巻のふしぎ 〜地上最強の気象現象を探る〜

日本一分かりやすい気象の解説者 森田正光氏とアメリカの竜巻に詳しいNHK国際放送の気象キャスター 森さやか氏が、竜巻のふしぎな実態についてこれまでにない視点から分かりやすく解説しました。

竜巻といえばアメリカが本場という印象が強いですが、東京都民が一生の間に竜巻に遭う確率はアメリカ人とほとんど変わりません。気象庁によると、温暖化の影響もあって将来、日本でも竜巻が倍増する可能性があるということです。実際に2000年代に入ってからも、佐呂間町、越谷市、つくば市などで竜巻によって大きな被害がでています。

本書では、
・竜巻はどうやってできる?
・藤田スケールってなに?
・温暖化で竜巻は増える?
・日本も竜巻大国って本当?
といった竜巻の科学から
・竜巻が近づいてきたらどうする?
・竜巻の避難訓練ってどんなもの?
・竜巻がニワトリを丸裸にする?
といった竜巻から身を守る方法やミステリーまで、全33項目をQ&A形式で解説しました。

さらに終章では、世界に名を残す気象学者 藤田哲也博士を取り上げ、Fスケールを考え出した経緯やダウンバーストの発見、アメリカでの研究歴など、その挑戦心にあふれた生涯を紹介します。

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